ドイツで行われている、アニメと日本エキスポ「DoKomi (ドコミ)」。

アニメ・漫画・ゲーム・コスプレ・J-POP・日本文化などのあらゆるコンテンツが楽しめる、ドイツ最大級のオタクカルチャーイベントです。

DoKomiの魅力は、参加者がコスプレをしての舞踏会やダンスコンテスト、クリエイティブワークショップやみんなで盛り上がることができるJ-POPのDJブースなど、他の日本カルチャーイベントでは味わえない、「ファンが主役」のユニークなプログラムが多数用意されているところ。
3日間で最大21万5千人が来場するほど大きな盛り上がりを見せており、その需要は、年を追うごとに上がり続けています。

今回の記事では、DoKomiの運営チーム「AkibaDreams GmbH」さまとともにつくり上げたWebサイト制作の舞台裏や、実際のWebデザインがどのように機能しているのか、つくった「その後」までをお届け。
今回はオンライン上でお話の機会をいただき、たっぷりと語り合っていただきました。

登場人物紹介

なぜ海を越えて?スピッカートへの依頼経緯

―― 海を越えてのご依頼、本当にありがとうございました。日本文化を扱うイベントとして、こうして日本の会社とやりとりをすることは慣れていたのでしょうか?

【ベンジャミンさん】
いいえ、あまり慣れていません…。わたしは日本語がうまく話せるわけではないので、うまくやり取りができるか、とても不安がありました。
でも、そういったコミュニケーションの不安があったとしても、やっぱり日本のデザイン会社がよくて。わたしたちと日本の会社をつなげてくださっているピアさんに相談したところ、「やれるだけやってみよう」と、チャレンジを後押ししてくださいました。

【ピアさん】
実際、日本の会社とやり取りをする際、お返事がまったく返ってこなかったり、やんわりと断られてしまったりすることも多いんです。今回は「当たって砕ける」精神で、ベンジャミンさんの背中を押しました。スピッカートさんに興味をもっていただけて、本当によかったです。

―― なぜ日本のデザイン事務所、そしてスピッカートだったのでしょうか?

【ベンジャミンさん】
ドイツのデザインは、洗練されて機能的なものが主流です。ドイツのデザインはわたしも好きなのですが、DoKomiのサイトには、カラフルで遊び心のあるデザインを求めていました。
探せばドイツでもそういったデザインができる会社はあるかもしれませんが、この独特なカルチャーの説明から始める必要があることを考えると、オタクカルチャーの本場である、日本の会社にお願いするのが良いと思ったんです。
それで、日本のWebデザインギャラリーを見ていたところ…

【スピッカート代表・細尾】
あすかのサマバケ」のサイトを見つけてくださったんですね。

あすかのサマバケのファーストビュー

【ベンジャミンさん】

そうです!「あすかのサマバケ」は、にぎやかな雰囲気がありつつも、数多くのプログラムをきれいに整理されていて。わたしの考える理想のサイトにとても近いものでした。「DoKomiのサイトもこんな風にしてもらいたい!」と思ったのが、スピッカートへ依頼をした経緯になります。

「何がどこにあるかわからない」10年前以上前に制作したサイト

―― リニューアル前のサイトにはどんな課題があったのでしょうか?

【ベンジャミンさん】
既存のサイトは10年前につくったものだったので、正直なところ、自分たちでも「どこに何の情報が書いてあるんだろう?」と分からなくなることがありました。(笑) 何か情報を更新しようと思っても、「どこまで直せばいいのか」が分からない状態だったんです。

ゲストをお呼びするために日本へプレゼンをしにいったときも、当時のWebサイトを見せるのが少し恥ずかしくて…。

リニューアル前のサイト
リニューアル前のサイト

―― 既存のサイトだと説明がしにくかったのですね。

【ベンジャミンさん】
そうなんです。お話をするときにあたふたとしてしまって。
だから、新しいサイトでは、イベントの雰囲気が伝わるようなにぎやかさは大切にしつつも、例えば「チケットはどこで買えるのか」「一般参加はどのプログラムでできるのか」といった情報が、誰でもすぐに見つけられるようにしたいと考えていました。

【ディレクター・前川】
既存のサイトは、10年にわたって情報が追加され続けた結果、サイドメニューに膨大な項目が並んでいる状態でした。
さらに、DoKomiのイベント自体もプログラム数が多く、内容が多岐にわたるため、これまでに蓄積された10年分の情報と、現行のコンテンツの両方を整理していく必要があると感じました。

リニューアル後のサイト


そこで今回は、まず全体の情報を把握し、それらをグルーピングするところから始めました。スプレッドシートでの整理や打ち合わせを重ね、細かな認識をすり合わせながらすすめることで、参加者の方々が目的の情報に迷わずたどり着ける、使いやすいサイト構造へと再構築していきました。

【ベンジャミンさん】

コンテンツを整理するスプレッドシートは、本当にありがたかったです!カテゴリー分けをしたことで、毎年更新が必要な情報もメンテナンスしやすくなりました。
また、チケット購入ボタンをどのページからもアクセスできるようにしたことで、『チケットはどこで買えますか?』という質問も減り、対応に追われることが少なくなりました。
リニューアルを機に情報をしっかり整理したことで、参加者の方々だけでなく、運営側の負担も確実に減ったと感じています。

DoKomiならではの「空気感」を、そのままWebサイトへ詰め込む。

―― サイトデザインのコンセプトについても、教えてください。

【細尾】
実際のイベントの様子を拝見した際、大型イベントでありながらも「みんなでこのお祭りを楽しもう!」というアットホームな雰囲気がただよっていることが印象的で、「DoKomiというイベント自体が、唯一無二のブランドとして機能している」と強く感じました。
Webサイトでもそれを表現したいと考え、全体構成では「DoKomi」のロゴを大胆に切り取る手法を採用しました。また、出展者やゲストの写真を「DoKomi」の文字でかたどったり、カラフルな「DoKomi」のロゴがアニメーションで現れる演出を加えることによって、イベントのにぎやかさや、その場にいるかのような没入感を演出しています。

【ベンジャミンさん】
わたしが共有したアイデアを、細尾さんが見事に汲み取ってくださいました。サイトをさらに良くするための新しいアイデアも浮かび、とてもワクワクしています。アニメーションも非常ににぎやかで、最初に見たときは驚かされました!DoKomiらしい、カラフルで楽しげな表現に仕上げていただけて、とても満足しています。

Dokomiらしい「熱狂」を、ずっと。

―― サイトが使いやすくなったことで、DoKomiに参加するファンの方々が、当日のイベントをより楽しめるようになったのではないかと思います。

【ベンジャミンさん】

そうですね。日本のアニメやゲーム文化を楽しむイベントは年々規模が拡大しているので、参加者が満足できるよう準備を整えることはとても大切だと感じています。DoKomiも他のイベントと同じく、年々規模が大きくなっていますが、わたしたちは引き続き、「ファンのための、ファンによるイベント」というコンセプトを大事にしてきたいと考えています。

【ピアさん】
そうですね。今後もDoKomiを「ファンが主役のイベント」にしていくために、特に大切にしていることが大きく3つあるように思います。はじめに、「人と人が繋がれる場所である」こと。つぎに、「クリエイティブな考えをもつファンが、自分のスキルを存分に発揮できる場所を用意する」こと。そして最後に、「日本文化を伝える場である」こと。

―― 一つひとつの説明をぜひ、お聞きしたいです

【ベンジャミンさん】

ではまず、「人と人が繋がれる場所である」ということについて。
数年前までは、ファン同士が交流する際、掲示板のような小さなコミュニティで仲間を作り、語り合うことが一般的でした。しかし、X(旧Twitter)やInstagramなどの大きなコミュニティハブが普及し、気軽に交流できるようになった現代では、以前のような濃い関係を作るのは難しくなっています。
だからDoKomiは、昔のファンコミュニティのように、ファン同士が密に交流できる場であり続けたいんです。
その一環として、つい最近、ファンの方々が自由に交流できるアプリをリリースしました。インタビューの1週間前に宣伝したばかりですが、すでに100を超えるミートアップ(交流会)の予定が書き込まれています。濃い交流ができる場所は、今の時代でも求められているのだと感じています。

つぎに、「クリエイティブな考えを持つファンが自分のスキルを存分に発揮できる場所を用意すること」について。
「キャラクターのコスチュームを作りたい!」「作品の世界観を広げるファンアートを描きたい!」「大好きなアニメソングを誰かと演奏したい!」など、DoKomiに参加するファンの皆さんは、誰もがクリエイティブな考えを持っています。
DoKomiは、そうした熱を存分に発揮できる場であり、さらにワークショップなどを通じて他の参加者とスキルを共有できる場でもありたいと考えています。

―― なるほど。では、最後の「日本文化を伝える場である」というのは…?

【ベンジャミンさん】

日本のアニメやゲームカルチャーに夢中になったファンは、多くの場合「日本のことをもっと知りたい」「日本に行って本場の空気を感じたい」といった、日本という国自体の興味に辿り着きます。だからDoKomiでは、正しい日本文化を伝える場や、日本を訪れるサポートをしたりできる場にしていきたいんです。

【前川】

なるほど…!日本について知りたいと思ってもらえるのは、とっても嬉しいですね!

【細尾】

そうですね。こういったところから、もっともっと日本とドイツの交流が生まれていくといいなあと思います。

インタビューが終わりに近づくと、お互いの好きな漫画やゲームの話に。
「葬送のフリーレン」が、日本でもドイツでも大流行しているのだとか。
 好きなものを「好き」だと思う力は、言葉や国の壁を超えて、人と人をつなぐきっかけをくれる。日本カルチャーイベントが世界で広がり続ける理由が、ここにあるように感じます。

今回のプロジェクトは、スピッカートにとって初めての海外案件でした。「AkibaDreams GmbH」のみなさま、本当にありがとうございました!