ブランドやコンセプトをデザインに落とし込むとき、
私たちはどのように考え、何を大切にしているのか。

今回は奈良東病院さまの事例を通じて、思考プロセスを一つひとつご紹介したいと思います。
ブランドをもっと強くしたいけれど、何から手をつければいいのかわからない。そんな方にとってヒントになる内容をお届けできればと思います。

まずは、 奈良東病院さまのこと

今回ご一緒したのは、奈良県天理市を拠点に、医療・介護・住宅を一体的に提供している奈良東病院さま。地域に根ざしながら、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現を目指しています。
グループとしての取り組みや規模感を外に伝えていきたい、ここで働きたいと思ってもらえるWebサイトをつくりたい、というご相談をいただきました。
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課題整理とコンセプトづくり

Webサイトはあくまで手段のひとつ。まずは課題そのものと向き合うことから始めます。
奈良東病院さまが抱えている課題や想いをじっくりとヒアリングさせていただいたのち、その内容をもとに、課題を整理していきます。

【奈良東病院さまの強み】
・「おかげさま、おたがいさま」という精神が、組織の文化として根づいている
・職員さんが仕事に誇りとやりがいを持っている
・地域の課題解決に尽力し、見守り合い・支え合う循環の実現を目指している
・質の高い看護・介護の提供を、チームワークと学ぶ姿勢によって維持している

【課題として見えてきたこと】
・グループの取り組みや規模感、魅力が外に伝わっていない
・採用につながるような「ここで働きたい」と思わせるデザインになっていない
・情報発信の力が弱い

課題を解決するために、以下のように各制作物の役割を一つひとつ確認していきます。


● ブランドコピー
「おたがいさま、おかげさま」という精神と事業に対する想いを言葉にして、ブランドの軸をつくる。
● Webサイト
事業の概要を伝えながら、「働く人」が見えるサイトへ。人の温度感と、医療への真摯な姿勢を両立させる。
● キャラクター
グループのシンボルとなるキャラクターで、幅広い年齢層への認知度アップとブランドイメージの定着を図る。ロゴを変えにくいという課題もキャラクターで補っていく。
● ビジョンイラスト
実現していきたい未来を、一目で直感的に伝えられるビジュアルに。職員さんへの共有と浸透を図り、内にも外にも機能するツールとして。


そして最終目標として掲げたのが、グループの取り組みや魅力・規模感を伝えながら、働く人の姿を見せることで採用にもつなげていくこと。さらに、デザインに統一感を持たせ、認知度の向上につなげていくことです。
制作物を個別に考えるのではなく、すべてを同じコンセプトのもとで設計すること。
それが、ブランドを「点」ではなく「面」で伝えるために重要だと考えています。

● ブランドコピー
強みや想いを言葉にして、ブランドの軸をつくる

制作の最初のステップとして取り組んだのが、ブランドコピーです。
お客さまが大切にしている価値観や想いを言語化することで、その後の制作全体の方向性が定まりやすくなります。自分たちらしさについて、改めて向き合うきっかけにもなる、大切な言葉です。

今回ご提案したコピーは、「おせっかい」をキーワードとして制作を進めていきました。
ヒアリングを通して見えてきたのは、高齢者の孤独死の問題や、認知症の方の見守りなど、一人の力だけでは解決できない課題に率先して向き合う姿勢でした。そんな「誰かのためを思って行動する」ことこそが、奈良東病院さまらしさなのではないかと考えました。
「おせっかい」という言葉には、少しマイナスなニュアンスもあります。だからこそ、距離の近さが伝わる言葉でもある。患者さんや利用者さん、そして職員さん一人ひとりを何よりも大切にする文化から紡がれる未来を、想像してもらえるようなコピーを目指しました。

● キャラクターデザイン
ブランドの人格を体現し、認知度と親しみやすさを高める

コピーと並行して取り組んだのがキャラクターデザインです。キャラクターをつくるにあたって「もしこの奈良東病院が人だったとしたら、どんな性格?」「どんな人が働いている?」といった“人”にフォーカスをあてて考え、そこからブランドの人格を引き出していきました。

今回ご提案したのは、顔の形を自由に変えながら感情や思いを表現できるキャラクター。
「人のいいところを素直に受け入れる柔軟さ」という、このグループが持つ強みをそのままかたちにしました。Webサイトへの展開を想定し、動きのあるキャラクターに仕上げることで、印象に残りやすいタッチポイントとなることを目指しました。

実はハートのかたちをした「ころろ」は、別案としてご提案したもの。人を大切にする思いやりのある奈良東病院さまを表現していて、とても気に入っていただき採用されるという嬉しい結果に。そっと寄り添うようにそばにいる存在をつくることで、思わず応援したくなるような愛されるキャラクターに仕上げることができたと思います。

● Webサイト制作
事業の概要をしっかり伝えながら、採用の側面を持たせる

Webサイトの制作は、ワイヤーフレームから始まり、ベースデザイン、下層ページ展開、コーディング実装という流れで進めていきます。それぞれの工程で何を考え、どんな判断をしたのか、順番にご紹介します。

01. ワイヤーフレーム

ワイヤーフレームとは、サイトの設計図のようなもの。サイト全体の役割を明確にしたうえで、「何を・どこで・どの順番で伝えるか」を整理していきます。このサイトの役割として、「どんな事業をしているのかが伝わること」と「採用サイトとしても機能すること」をしっかり押さえた上で、ブランディングにつながるように奈良東病院さまの想いを丁寧に伝えていくことを目的としました。
情報がわかりやすく迷わないページ構成と、じっくり想いを伝えるエリアを区別させながら、スタッフのインタビューページを充実させるなど、働くことへの具体的なイメージが持てる構成を目指しました。

02. ベースデザイン

サイト全体の印象を決めるデザインの基準をつくり、クライアントと方向性を擦り合わせる工程です。
ベースデザインで大切にしたのは、どんな人にもわかりやすく使いやすいこと、そして「人の温度感」です。アナログ感のあるあしらいやフリーハンドで描いたような曲線を取り入れることで、あたたかみのあるデザインに仕上げました。
ただ、あたたかいだけでは医療としての信頼感が損なわれてしまう。「医療に真摯に向き合うこと」の緊張感と、人を想うやさしさの両立を意識しながら、緩みすぎないバランスを保ちました。
メインビジュアルは、「心のつながり」が感じられるようにハートをモチーフにした表現で、手と手を取り合うビジュアルに。近い距離感で、心をつないでいきたいという思いを込めています。

03. 下層ページ展開

ベースデザインをもとに、ページごとの目的に合わせてデザインを展開していく工程です。
想いを伝えるページ(aboutや採用ページなど)と、情報として正確に届けるページ(事業紹介など)では、デザインのトーンを意図的に使い分けて展開しています。イラストを活用することで、文字だけでは伝わりにくい内容も視覚的にわかりやすく表現し、医療サービスとしての機能性をしっかりと持たせています。

04. コーディング実装

デザインをブラウザ上で機能するWebサイトとして仕上げる工程です。アニメーションはブランドの世界観を体験として伝えるために、とても大切な要素です。今回は情報のわかりやすさを最優先にしながら、キャラクターやイラストには愛らしい動きをつけることで、人を大切にする温度感を表現しました。顔の形が変化するキャラクターのアニメーションは、「柔軟さ」というブランドの個性を体験として伝える仕掛けになっています。

● ビジョンイラスト
一目で直感的に伝えられるビジュアルで、内にも外にも機能するツールに

実は制作が進む中で、奈良東病院さまから新たにご依頼いただいたビジョンイラスト。医療・福祉・教育を通じて、誰もが安心して暮らせる地域社会をつくりたいというビジョンをイラスト一枚に落とし込みました。大人も子どもも高齢者も、それぞれが支え合いながら広がっていくポジティブな未来を表現しています。
お客さまから「もっとこうしたい」というご要望が出てきたこと自体が、とても嬉しいことでした。デザインが自然と広がっていくのは、ブランドとして機能し始めているからこそだと思っています。

最後に。
コンセプトを起点に、根づいていくブランドづくり

今回の制作を通して改めて大切だと感じたのは、課題を正しく理解し、その課題に対して目的を持った制作物を設計すること。それぞれをバラバラに考えるのではなく、同じコンセプトのもとで複数のタッチポイントをつくること。そうすることで、ブランドイメージは自然と統一され、日常の中に定着していきます。
ただ、それだけではブランドにはなりません。つくったデザインが日常の中で使われて、そして愛されながら自然と根づいていくことこそ、ブランドづくりの本質だと考えています。

今回の事例では、私たちの提案を起点に、奈良東病院さまが主体となって活用を広げてくださいました。キャラクターの名前を社内公募で決めたり、ぬいぐるみ化してくださったり(かわいい…!)、Instagramの発信に役立てていただいたり。私たちが手がけたのはデザインですが、それを育てていったのは奈良東病院さまなのです。その姿を見ていて、「これがブランドの本当の広がり方」だと学ばせていただきました。

デザインがただの視覚的な情報ではなく、日常の中で使われ、親しまれる存在へと定着していく。それを一緒につくっていけることが、私たちにとって何より嬉しいことです。この記事でご紹介したことが、ブランドづくりやWeb制作に取り組むときに、「こう考えてみるのも一つかもしれない」と感じていただけるきっかけになれば幸いです。

Webサイト制作を検討されている方は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。
▶︎Webサイト制作を検討するときに、整理しておきたい4つのこと